本格的に鶏が飼育され、鶏卵を食べるようになったのは江戸時代(1603〜1868年)と推測されます。それまでは仏教の影響下で、たまごを食べること=殺生、とされていました。平安時代(794〜1185年)の説話書『日本霊異記』では、「鳥のたまごを食べると悪いことが起きる」といった記述が残っています(中巻第10縁)。

この殺生という概念を覆したのは、カステラなどの南蛮菓子やたまご料理が広まったことです。愛玩用の鶏が産んだ卵(無精卵)が孵化しないことを受け、「たまごは生き物ではないから殺生にならない」と解釈され、たまごを食べるようになったと思われます。

では、加熱調理していない生のたまごをかける「たまごかけご飯」を食べるようになったのは、いつからでしょうか?

一説には、画家・岸田劉生の父で事業家の岸田吟香(1833〜1905年)が、たまごかけご飯を食べた日本で初めての人物とされています。

近代に入り、食生活の欧米化が進み、たまごや肉、乳製品の摂取が推奨されました。栄養価も高く安価なたまごが健康の象徴になり、生卵を食べる事が一般化するなかで、たまごかけご飯も一般に広まっていったと言われています。